ども、稀見理都です。

同人作家は、コミケ入稿からコミケまでが「夏休み」で、夏コミが終わると「夏が終わった」と感じる人々だというのが、ツイッターのＴＬなどを眺めているとよくわかります（笑）



さて今日は久しぶりのコラム。まだ完璧ではないものの、2000年代に入ってからの成年コミック（いわゆるマーク付き）のデータをようやく入力し終わりました。せっかくなので何か調べてみようと「アマゾン」に登録されていない成年コミックがどのくらいあるのか調べてみました。

基本的にデータ漏れというわけではなく、意図的に削除したデータが漏れているわけなんだけど、どういう本が削除されているかというデータをちゃんと調べたのは私が初めてかも（笑）

でも、そんなデータ誰が興味を持ってくれるんだ！？

とツイッターでつぶやいたら、けっこう興味にある人がいるみたいなので、じゃ、まとめてみようと整理してたんですがけっこう時間かかってしまいました(^_^;

と言うわけで、今回は「アマゾンが示す 不健全 とその矛盾！」と言うテーマで！



アマゾンに登録されている成年コミックが、実際何点あるかはわからないが、2000年代に入ってからはほぼ漏れなく登録されている。しかし、アマゾンジャパンは2009年の中頃に取り扱いを変更する方針（内部規定）を作り、その基準に当てはまる？成年コミックの登録削除を始めた。

以下が一部の出版社に配られた、アマゾンの内部規定と思われる文章である。ただし、店舗側（購買者に向けて）にはそのような記述はされていない。


一般に流通している本を、アマゾンの倫理で登録を削除することに何の意味があるのであろうか？　このアマゾンが考える倫理は何なのか？　そして、その規定はちゃんと守られているのか？

その疑問を調べるために、2000年から今日までに登録を削除されている成年コミック（ただしアンソロジーを除く）をリストアップしてみた。
（ただし、漏れや本当は登録されているものもあるかも…）


全部で約100件の削除件数になる（アンソロジーを含めると260件）

このラインナップを見てみると、アマゾンの内部規定に当てはまっている作品が多く見られる。具体的には以下のようなパターンである。



タイトルに「陵辱」「レイプ」「強姦」「輪姦」「獣姦」が含まれていると基本的にＮＧになる。では、このＮＧワードに引っかかる作品は全てＮＧなのであろうか、というと実はそうではない。

以下の作品は、アマゾンでしっかり購入可能である！



これはどういうことであろうか？　ＮＧワードだけを設定してはじけばこういうことはないはずだが、でもそうすると、専門書、学術書、新書のような内容は問題ない書籍まではじいてしまう可能性がある。なので、機械的ではなく一応人間の目で内容を精査しているようには見えるが、結局完璧なフィルタリングではなく、たまたま目についたものを削除している感じではある。

数だけで言うと、だいたい50％の削除率である。２冊に１冊は検閲を通る確率！

面白い例として栗田勇午先生の「ずーふぃりあしんどろーむ 」というマンガがある。



この成年コミックはＮＧワードには引っかからないが、よくタイトルを読むと「（ずー）ＺＯＯ」というひらがなから、獣姦ものという事がわかる。
すなわち、アマゾン倫理審査委員会（勝手に命名）は一応、内容まで精査して判定を下しているようには見える。



しかし、そうは言っても、内部規定文書からはどうしても納得のいかないリストもいくつか見ることが出来る。

どのＮＧワードにも触れない以下の６冊であるが…



この６冊には、特にＮＧワードらしいものは見当たらない。共通点と言えば「ロリ」である事であろう。しかし、他のロリものはいくらでも購入可能だ。では、何故この６作品だけアマゾンではＮＧなのだろうか？

これは、2009年の5月にアメリカのマンガコレクターが日本の「ロリマンガ」を所有していたという事から、アメリカの「児童ポルノ禁止法」に触れ告訴された事件があり（詳しくはこちらを）、その彼が所有していた７冊中６冊が、上に示した６冊だったので（残り１冊はアンソロジー）その事がきっかけで削除されたと考えられる。

内部規定は「amazon.co.jp」だけの規定のはずなのに、アメリカのこの事件だけを考慮するというのは、いささか基準が曖昧だと言わざるを得ない。実際、他のロリマンガ（削除された作者の新作など）は削除されていないわけだし。

ただ、この内部規定が実行され始めたのは2009年中頃で、この事件も2009年5月という事から、この事件がきっかけで「アマゾン倫理審査委員会」が設立させたのではなかろうか？

さらに、何故削除されたのかがわからない本もある。



「巫女」がＮＧワードという話は全く聞いていない。アマゾン的には「神聖」な巫女が陵辱されるマンガは「卑猥度」が増すのであろうか？　あと、裏次郎（現：杉浦次郎）先生の「ひよこのたまご」はアメリカの事件も何も関係していない、普通のロリものだが、これも削除されている。

あと、急に削除対象に選ばれたのか、以下の２つもはじかれている…



なんと、キルタイムのお家芸（いや、日本文化の触手！）までもはじかれ始めている。ここだけ、アメリカ基準なのか？？（アメリカでは触手が異常に好まれている）

そして、一番わからないのがこの２冊！



月吉先生の代表作２点が、何故かすっぽりと削除されている。
ロリでも、ＮＧワードでもないのに一体何故？？　強いて言えば「痴漢もの」があるという部分だろうか？　でも、タイトルに「痴漢」という文字はないし、他にも痴漢ものはいくらでもあるんだが…



いろいろ「どうしてこれが？？」というものが多い中、一番分からなかった矛盾がこれである。



なかじま超助先生の「セクハラマン」の３巻だけがＮＧで登録を消されている。１巻も２巻も、そして４巻も消されていないのに…。そもそも何がＮＧ何だろうか？　「セクハラ」というタイトルか？　と思ったら、東航先生の「ＯＬセクハラ恥肉奉仕」は問題なく購入できる。一体どういう基準なのだ？？

そもそも「「残虐表現」「ドラッグ」「鬼畜系」「食糞」「獣姦」等の残虐表現」を含むなんか言ったら、ほとんどのエロマンガが当てはまる可能性がある、非常に広い抽象的な定義だ。何が卑猥で、何が残酷か？　どんなに軽いエロでも卑猥と感じるとても敏感（笑）な人だっているわけで、こういう規定を決めてフィルタリングをする意味が本当にあるのか本当に疑問である。

残酷表現で言えば、有名な作家「氏賀Ｙ太先生」「駕籠真太郎先生」などの作品は問題なく購入できたりする。



フィルタリングがざるで、曖昧な基準自体が逆に、購入者にとってのゾーニング、著者、出版社の困惑を招いているのではないだろうか？

とは言いつつも、やはり「直球」のＮＧワードを用いると、アマゾンで本を取り扱ってくれないことになる。それを回避するために、タイトルを変えて再版するという動きも出てきている。



木静謙二先生の「今夜、とにかく陵辱が見たい」という本は、新装版として「陵辱」という文字を「ＸＸ」に変えて、アマゾンの審査をかいくぐっている。しかし、よくよく考えたら内容は変わっていないので、どんな卑猥で残酷なマンガでも、タイトルを変えれば購入できてしまうということになる矛盾がここにもある。




今回はあくまで「マーク付き」の成年マンガの中で話を進めてきたが、それ以外のジャンルでももちろん、検閲削除はされている。

その代表格が「東京都の青少年健全育成条例」で指定を受けた本はアマゾンから登録を消されるという事である。



RAYMON先生の「ニュースのお時間」は2010年の10月に「東京都の青少年健全育成条例」で指定を受けた影響で、アマゾンから本の登録を消去された。

ただ、何故消去までされないといけないだろうか？

一般的に「東京都の青少年健全育成条例」で指定を受けるという事は、その本を売ってはいけません！という指示ではない、発禁ではないのだ。

ただ、エロいから１８禁コーナーで売ってね！（ゾーニングしてね！）という指示になるが、各本屋に通達したり、成年マークを付けたりと実際の本を売るためのコストがかかり、ゾーニングする意味がなくなって事実上の絶版になってしまう現状にある。

しかし、そういうコストのかからないネット通販で、削除する意味は本当はないはず。ただ、データ的に「成年マンガ」にするだけで問題ないはずなのだが、何故かそうはしないで、単に登録を消すのです（そっちの方がコストがかかりそうですが…）

それに、都の条例だけの基準で、他の都道府県で指定を受けた本などは完全には考慮されていない。ネットなので都道府県の枠自体関係ないとは思うのだが、この辺も曖昧でよくわからない部分でもある。

今回、データをまとめてみてわかったことは、アマゾンの行っている検閲はゾーニングでもなければ、正確なフィルタリングでもないという事。確かに、内部規定を作ったとしても、もともと曖昧な表現でのフィルタリングなので完璧にできる訳ではないのですが、一体何のための検閲なのか！という疑問ばかり露呈する調査になった。

何のため誰のための検閲なのか？　「ちゃんと社会的な責任を果たしていますよ〜」という、アピールとしての検閲にしか感じられなかったのは、私だけの思い過ごしであろうか？