■そうだ、お茶の水へ行こう!
先月の31日(2009年10月31日)に日本のサブカルチャー研究の礎(いしずえ)になるであろう重要な図書館がオープンした。もうニュースなどで知ってる人が多いとは思うが、コミケの神様、主に故・米沢嘉博氏の蔵書を元に創設された「米沢嘉博記念図書館」である!
どういう図書館か、また開館までの経緯などは「
米沢嘉博記念図書館」のホームページを見ていただければ、ほとんどのことはわかるであろう。また、ニュースサイトでもいろいろとレポートされている。
ただマンガ図書館などは、今までにも「
現代マンガ図書館」や「
京都国際マンガミュージアム」などがあり、マンガ専門でなくとも、蔵書数でいえば「
国立国会図書館」などももちろんマンガは扱っている。
しかし、どの図書館も「成年コミック・雑誌」に関して言えばまだ非常に弱い部分があり、我がサイト「えろまんがけんきゅう(仮)」としては、「米沢嘉博記念図書館」もしくは、現在計画中の「東京国際マンガ図書館」(仮称)において、成年マンガ・雑誌がどう取り扱われるという部分は非常に気になるところではある!ヽ(*°ω°)ノ
と言う訳で、オープンしたのは先月ですが、さらにさかのぼり、ある意味一番忙しい9月に「米沢嘉博記念図書館」の設立の貢献者の1人でもある、森川嘉一郎氏にお話を伺いました。
※この記事は、先日オープンした米沢嘉博記念図書館の開館約2ヶ月前、9月初旬に取材してまとめました。
ゲストプロフィール
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森川嘉一郎
明治大学国際日本学部准教授。専門は意匠論。早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学院修士課程修了(建築設計)。 2004年ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館コミッショナーとして『おたく:人格=空間=都市』展を制作。著書『 趣都の誕生萌える都市アキハバラ』(幻冬舎)、『 エヴァンゲリオン・スタイル』(第三書館)、他。
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■も、もしかしてかなり迷惑?(^_^;
インタビューを行ったのは
9月の初旬。「この日のこの時間なら時間が空いてます!」と森川氏から連絡を受け、さっそく御茶ノ水にある「米沢嘉博記念図書館」(開館前)に出かけた。
待ち合わせ時間に少し遅れて森川氏が小走りで駆けつけてくれた。本当に忙しいらしく、インタビュー時間も1時間弱で、その後また別の用事があるという、もう秒刻みのスケジュール。
もしかして、もの凄い迷惑なのかも…(;゚∀゚)=3
と思いつつ「米沢嘉博記念図書館」の6階のへ移動。この時点では、まだ本の整理はもちろん終わってなく、未整理の段ボールが山積みなっていた。
| 開館前の9月時点での、整備中の閉架書庫。個人の蔵書なのに、とにかく膨大な量である! | |
■エロマンガを研究できる図書館を!
今回インタビューしたかった内容は、何より「米沢嘉博記念図書館」における成人向けマンガ・雑誌コンテンツの取り扱いについてだ!
ネット社会になり、ある程度のマンガに関するデータベースへのアクセスはしやすくなり、マンガ研究における基礎的な資料は手に入れやすくなった。しかし、サブカルチャー、特にエロマンガにける状況はあまり変わってなく、2000年以降のデータは比較的探せるが、それ以前になると急に見つからなくなる。
特に三流劇画、美少女コミック誌(ロリコン誌)などのアーカイブは少なく、なかなかまとまった資料を見ることはできない。これは国会図書館においても同様で、かなり抜けのある状態である。
今のエロマンガを語る上で、特に黎明期の資料は重要であり、個人的にはエロマンガアーカイブがしっかりしている図書館を切望していた。そう、エロを差別するな!!ヽ(*°ω°)ノ
というわけで、さっそくその辺の事情を聞いてみた。
稀見: | 今日は開館の準備で本当に忙しい時に時間を作っていただき本当にありがとうございます。 |
稀見: | エロマンガ研究、と言う立場からの質問なんですが、俗に言う成年コミック、三流劇画、美少女コミックからの流れを持つ今の成年コミックなのですが、他のマンガ図書館ではあまりきちっとしたアーカイブ化がなされていない部分でもあり、こちらの新しいと図書館に期待するところは大きいのですが、こちらでの成年コミックのアーカイブ化、展示方法などで方針が決まっているものなどがあれば教えていただけますか? |
森川: | 故・米沢嘉博氏の蔵書は美少女コミック、エロ劇画、同人誌、それから「カストリ雑誌」まで幅広く包含していて、それがこの米沢嘉博記念図書館の特質にもなっています。ただ、成人向けのマンガや同人誌は現在、目録化の途中なので、本格的な閲覧提供ができるようになるのは来年になります。そして、2014年を完成目標に準備を進めている「東京国際マンガ図書館」(仮称)では、この米沢嘉博記念図書館をそのまま引き継ぎつつ、他のコレクションと複合していきます。もちろん、成年コミックだから収蔵しないという事は全くありません。 |
稀見: | 現在発売されている成年コミック雑誌当は比較的集めやすいとは思いますが、主に各ジャンルの黎明期などの昔のものですが、有名な雑誌などはすでにあるとは思われますが、マイナーな雑誌やすぐに廃刊になった雑誌、コミックなどはどのように集めていく方針でしょうか? |
森川: | まず、米沢氏がマイナーなものを含め、相当な数を収集されていたので、米沢嘉博記念図書館の段階でかなり蔵書されることになるはずです。ただ、もちろん完璧ではありません。「東京国際マンガ図書館」へ向けた今後の収集については、米沢蔵書や、他の連携コレクションに欠けているものを洗い出し、それを埋めていく作業になります。おそらく、国会図書館で欠本しているものを優先して収集していくことになると思います。 |
稀見: | 「マンガ学」「オタク研究」などが叫ばれている今日ですが、特にこういう研究を今後行っていこうと思っている研究者にとってこういうアーカイブは必要だとは思うんですよ。森川さんも言っておられましたが「おたく」について研究しようと思うときに、やはり「漫画ブリッコ」の特集記事がすぐに手にはいらないという事は問題だとは思いますし… |
森川: | とりわけマイナーな出版社は国会図書館への納本を怠っていることが多いのですが、メジャーな媒体ではなかなか許されない先鋭的な表現が、マイナーな雑誌を揺りかごにして生まれる事例が多くあります。ですから、表現史を正確に描いていこうとすると、そうした雑誌のバックナンバーにアクセスできるようにしていく必要があります。その実現を米沢嘉博記念図書館、および将来施設である東京国際マンガ図書館では目指してゆきます。 |
稀見: | 今日は本当にありがとうございました。成年コミックを研究する上でも「米沢嘉博記念図書館」もしくは、その後の「東京国際マンガ図書館」は非常に力強い存在になると思いますので、今後の運営期待したいます! |
■非常に期待できる図書館!
インタビュー自体は1時間程度。ただ自分の仕事が忙しく、あまり準備ができなくて、質問したい事がかなりブレブレになってしまい、お忙しい森川氏には本当に申し訳ない事をした(きっと飽きられたに違いない(^_^;)
しかし、内容には非常に心強いものであった。もともと、なかなかアーカイブ化されたなかった、風俗文化、特にエロ文化への造詣が深かった米沢氏の蔵書をベースにされている、と言う時点でかなり期待はしていたが、より「完璧」な物に近づけていただけるという言葉には、並々ならぬ決意を感じさせられた!
とはいえ、どこがどう抜けているかなどの知識や入手の方法は、はっきりしていない部分もあるので、やはりエロ専門の司書さんを雇って強化していただけると嬉しい(笑)
以下の写真は、まだ整理中の主に美少女コミック雑誌に関わる棚を撮影させていただいたものである。
美少女コミックの古典ともいわれる「レモンピープル」(通称LP)の棚。もちろん全ての号(増刊までは確認してないけど)がそろっている。
初期のレモンピープルは中綴じで、表紙は3次元グラビアだった。この時期のレモンピープルはなかなか手にはいらないので貴重!
以下、美少女コミック雑誌の創刊号ばかり集めた棚。もう、喉から手が出るぐらいのライナップ(個人的に)。
これだけのものがそろっている図書館は、世界広しと言えここだけであろう。ああ〜読みたいものがたくさんある(^_^;
とはいえ、これでもエロ雑誌、コミックの完全なアーカイブとは言えない。まだまだ補完しなくてはいけない雑誌はいくらでもあるだろう。エロマンガ研究を行う上で、今後「米沢嘉博記念図書館」および、それを引き継ぐ「東京国際マンガ図書館」はキーになる図書館になるに違いない!
(でも、エロマンガ研究自体が、世に認知される時代は来るのか?(^_^;)
■いざ図書館へ!!
上の写真を見て「こ、これはさっそく見に行かねば!」と思う気持ちがあるかもしれないが、焦りは禁物である。と言っても、美少女コミックに関してではあるが、現状(2009年11月時点)では、まだデータベース自体が完璧ではなく、図書館に行ってもお目当ての雑誌が見つからない可能性がある。
また、美少女コミック雑誌は基本「閉架書庫」に収められていることが多いので、読みたいものがあるときは、まずは「米沢嘉博記念図書館」のホームページで、蔵書検索を行い、ヒットした場合に出向くのが賢明である。
持ち出しはできないが「閉架書庫」から本を出してもらい、閲覧、コピーをするのにも明治大学生以外の一般の人は有料になっているので、何も考えずにふらーっと行くと、無駄足になるかもしれない。(詳しくは
HPを参照)
といいつつ、開館したあとの「米沢嘉博記念図書館」にも行ってみた。
| 1Fは展示室で、閲覧室はエレベーターで上がった2Fになる | |
開館直後だったので、もう少し混み合っているかと思ったら、平日というのもあるのか、学生らしき人が4人ぐらいいる感じで、かなりゆったりとした空間だった。HP上の蔵書検索より詳しい検索ができるのかと思ったが、職員さんの説明によると、基本HP上と一緒で、検索自体に多少コツがいるとか(笑)
とにかく、膨大な蔵書のデータベース化にはもう少しかかりそうとの話だったので、本当に美少女コミック関係で捜しものがある方は、もう少し時期を開けて訪れる方がいいかもしれない。
(関連)
・
米沢嘉博記念図書館
・
東京国際マンガ図書館