ども、
稀見理都です。
イベントレポートは新鮮さが大事だとは思っているんですが、急に仕事がバタバタして、結局イベントから3日後のレポートですいません(特にイベント主催の浦嶋先生)。
というわけで、今週の日曜日(2月21日)に新宿の
ネイキッド・ロフトで行われたトークイベント「成年コミックの闇と貧困問題を語る・2」に行ってきました。
「パート2」という事は「パート1」があったわけですが、それは去年の11月に行われて、私ももちろん参加し、詳細は同人誌「
エロマンガノゲンバ Vol.2」に記事として書かせていただきました。
今回は同人誌には収録しない分、ブログの方でレポートを書かせていただきます。
■20年で20名以上の成人マンガ作家が亡くなっているが…
「貧困問題イベント」の一番の主旨は、成人マンガ家が最近の20年で20名以上、主に過労&ストレス性の病気などで亡くなっている現実があり(もちろん、死因はさまざまであるが、過労による病死が多い)、売れなきゃ貧乏!という一言で貧困問題を語っていいのかという、1つの問題提起である。
その他の成人マンガ家独特のいろいろな問題を話し合うイベントではあったが、前回のイベントだけでは話したりない、もしくは新しい問題などを引き続き考えていくイベントとして、今回のパート2への運びとなった。
今回のゲストは主に作家さんで、写真は左から、司会のナベさん、編集の西谷さん、マンガ家の
ねぐら☆なお先生、ホストの
浦嶋先生、マンガ家の
山本夜羽音先生、マンガ家の
ZERRY藤尾先生の6名のパネラーさん。
浦嶋先生が主張する、成人マンガ家の特殊な労働条件の過酷さが、貧困問題を初めとするさまざまな問題を生んでいる!と言う意見が前回イベントの出発点ではあったが、今回はあえて同業者でも、そこ意見は少し違うのでは?という、ZERRY藤尾先生が加わり(いろんな意見があった方がいいという事前の判断があり)、より多角的に問題を話し合うイベントになった。
ZERRY藤尾先生の反論ではないが意見は、死亡率で考えたら他の業種もそんなに変わらない。サラリーマンだってストレスで毎年たくさんの人が自殺したり、亡くなったりしている。(統計資料からの主張)
また、過度な仕事でのストレスという状況は、成人マンガ家でもある程度売れっ子の人のみで、新人状態からそういう状況にはなく、ある意味成人マンガ家に限ったことではない、というもの(抜粋)。
といっても、じゃ問題はないのかというと別で、別の側面での問題もいろいろ考えるべきだという事で、ある意味、いろんな人のいろんな意見があるが故に、全体像がはっきりとしていく…
今回主に新しく出た話は、時代と原稿料の推移。物価上昇率に対して、原稿料が頭打ちになっているのではないかという話が出て、作家さんの年代別原稿料を表にして、いろいろと現実的な話がおこなわれた。
ちなみに、写真のスクリーンにはゲストの先生を含む、作家さんが知っているその年代の原稿料(ページ単価)が書かれていて、非常に興味深いデータになっている。ただ、出版社や個人でかなりの差があり、時代としての平均値が出せない状態ではあったので、あくまで参考資料だ。
■コンテンツビジネス全体の問題
今回新しく出た問題で、最近の電子出版事情に、成人マンガ家かどのように対応していくか!と言う物が非常に興味深かった。私も、コンテンツサービス業に従事している身なので、多少重なる部分はある。
まず、携帯エロマンガ事情。
とにかく、新規参入の会社が山ほどあり、そのほとんどが編集という事業の未経験企業。故に、いろいろな問題が出てくるというはなし。
次に電子出版の話。
携帯コンテンツ同様、新しくコンテンツを作るよりは、過去のコンテンツを配信する会社が乱立している。理由は初期投資が少なく、すぐに着手でき、利益が大きいから。なので、中堅以上の作家さんに過去のコンテンツの配信依頼が殺到している。
しかし、そこで問題になるのが「契約問題」。
契約自体があって問題になる場合もあるが、契約も無しに
勝手に配信され、かつ印税や権利などが作家に全く無視されて放置されている場合もあった。
契約があったも、作家側に
不利な契約や、あとからできた契約で他社とのトラブルになるケースもある、など、作家にとってより契約や、約束を慎重に行う姿勢が問われている。
これについては、今までの出版社とは違う企業の進出によって、作家側も「
今までと一緒」と簡単に考えないで、ある程度勉強する必要がある、などの話が出た。
しかし、ここまで来ると、もう「成年マンガ家」という小さいくくりではなく、コンテンツ(音楽、小説、アート、ソフトウェア)を作る全ての人に言える問題であるのは確か。マンガ家という枠を越えた難しい問題に広がりつつある…
■フリーという新しいビジネスモデル
今後のデジタルコンテンツに関するビジネスモデルとして、ZERRY藤尾先生が「
フリーミアム(Freemium)」という
概念にシフトしていくだろうと話していた。概念を試し始めている、と言う指摘があった。
【追記】ZERRY藤尾先生からの指摘で、先生自体がシフトしていくという考えを予想しているわけではなく、そういうことを試している人もいる、と言う意味であったので訂正して、お詫びいたします。ただ、個人的感覚としては多くの人が、この概念を試して全体として、シフトしていくような感覚があるようには感じています。
この言葉は「フリー(無料)」と「プレミアム(付加価値)」をあわせた造語で、簡単に言えば、ほとんどの部分を無料で提供し、残りの(5%ぐらい)部分にプレミアを付けて商品を提供するビジネスモデルである。
日本の出版界は、コンテンツ界は非常に利権ばかり守ろうとして、コンテンツをより流動的にできていない。「フリーミアム」と言うモデルは結構成功しているので、もっと市場を解放すべき、という。
そこで、思い出したのが「
モーニング2」のネット無料配信というモデルだ。
無料で配信したら、肝心の雑誌が売れないじゃないか!!と思う人がいるとは思うが、実際は雑誌の方も売上も(最初の方のデータしか知らないが)伸びたという。
このモデルは、100%フリーからの売上アップなので、非常に驚きの結果だ。
また、最近「オヤ!」と思ったのが、成人雑誌「コミック阿吽」のマンガの
1話まるまる公開(試し読み)、というヒット出版の戦略だ。
今までは、サンプルとして何カットかを載せる事は多かったが、まるまる1話載せても、本を買うという1つの試みかもしれない。この辺は、効果がどのくらい出ているか聞いてみたい物だ。
しかし、ZERRY藤尾先生が話していて一番納得した話が、この「フリーミアム」の考え方は決して新しい物ではなく、日本の出版社が実は昔から行っていた方法だという指摘だ!
モデルは若干違うが、雑誌で連載されていたマンガを単行本になっても、また買って読んでしまう!という話は実はこのモデルに近い。
ようするに、話は雑誌で一度読んで知っているにもかかわらず、またあえて単行本で買って読んでしまいたくなる現象は、単行本の5%の付加価値にかなりの
価値を見いだしている証拠ではないかと…
確かにこれは面白いと思った。ま〜雑誌を買うのも、単行本を買うのもフリー(無料)ではないが、一度知った内容をまた読みたくなる、と言う部分は確かに面白い。俺は単行本主義!という人もいるだろうが、それはネットでも、俺は本で読む主義!みたいな部分かもしれない。
なので、まずはコンテンツをもっと流動的に、そして自分なりの価値を見いだせる物にして欲しい当部分は私も同感である。ただ、同時に違法コピー、などのネット特有の問題も考えていく必要はあるだろう。
■イベント自体の問題
今回のイベントも、3時間では結局話したりない感じで終わってしまった。
というか、こんな大きなテーマが3時間でまとまるわけがないので、これからも「パート3」「パート4」と続いていく事は確か(というか、続きます(^_^;)
ただ少し残念に思うことは、こういうイベントは行うことも大事だが、より多くの人を巻き込んでできればと思う。できれば、作家さんにしても、より多くの年代、ジャンル、そして作家さんだけでなく、編集側の意見や、その他の成年マンガにかかわるいろんな人に参加して欲しい。
そうなってくると、キャパの少ないロフトだけで行うのも限界がある。同時にネット放送(録画でも可)、ツイッター実況など、まさにネットメディアなどをもっと多用してもいいかなとは思った。客層も若干高年齢なので、場所もアキバでやるとか、イベント自体の手法もいろいろ工夫していく必要があるかもしれない。
ただ、顔出しや、
オフレコトークができないという制限も出てきてしまうので、その辺は議論の余地があるかも(^_^;
レポートと言いつつ、正直半分も要約できていません。ほんと、もっといろんな話題が出ました。初めてお会いした、ねぐら☆なお先生のお話なんか、もの凄く興味深く、面白かったです。次回のイベントは秋ぐらいになるそうですが、この記事を読んで興味を持たれた方は是非、出かけましょう!( ^_^)/