Vol.2も熱い(厚い)よ!!
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あけましておめでとうございます!

2009
月野定規先生 インタビュー
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さて、お待たせしました、今年最後のインタビュー企画を飾る作家は「月野定規」先生です。今年の後半最も緊張し、最も感動したインタビューでもありました。

オファー自体は夏コミ直後にメールで申し込んだのですが、返事がなく「さすがに無理かな〜」とちょっと落ち込んでいたのですが、夏の終わりのマンガさんの大勢集まるパーティーで月野先生を見つけ、ダメ元でもう一度アタックしたところ、そもそもメールがどういうわけか届いていなかった、とのこと…(^_^;

ネットのメールは今や届かない事が前提になっている、何となくローテクなコミュニケーション手段なんだな〜と、あらためて感じる出来事でした。で、もちろん直接オファーしたところ、インタビュー自体は快諾していただき、インタビューする事ができたわけですが…

やっぱり、オファーは直接会って、心を込めて行わないとダメだな!と、感じた出来事でもありました(笑)

ま〜相変わらず、能書きが多いのでさっさと始めましょう。
月野先生の、熱くて感動するインタビューをどうぞ!( ^_^)/


ゲストプロフィール
月野定規

「快楽天1999年2月号」(ワニマガジン社)にて「妹の恋人」でデビュー。叙情的作品から、コメディー、ハードコアとさまざまな秀逸な作品を送り出してきた、今のエロマンガ界を代表する作家。子宮表現を前面に出した「墜ちもの」作品には定評がある。
今ハマっているアニメは「君に届け」。

■おかのはじめ先生登場!!

待ち合わせ場所の「秋葉原駅昭和通り口」に颯爽と現れた月野定規先生。何度かお会いしているが、ダンディーでイケメン先生である。ゴージャス宝田先生が嫉妬するのもうなずける(笑)

今回はさすがの大先生のインタビューという事で、私だけでは役不足と思い、月野先生と親交が深い、おかのはじめ先生にもスペシャルコメンテイターとして、インタビューを見学していただこうと事前に参加をお願いしていた。

しかし、そんなおかの先生は私のことに気づかず、華麗にスルー(笑)あわててご挨拶をし、合流しインタビューを行うカラオケBOXへ向かった…。

特別コメンテイター
おかのはじめ

別名、乱満。作品の方向性で2つのペンネームを使い分ける。月野定規先生とほぼ同時期に「萬福星」(ビブロス)にてデビュー、月野氏との親交も深い。CG塗りによる独特の絵柄を駆使する作家。ペンネームは、某少女マンガの主人公とは全くの無関係


■「月の支配者」じゃ、さすがにちょっとでかすぎる!

稀見:月野先生、おかの先生、よろしくお願いいたします。
月野:よろしくお願いいたします。
稀見:今日は大先生のインタビューという事で、せっかくなのでレポートマンガも描いていただければと思い、おかのはじめ先生にも来ていただいています。おかの先生もよろしくお願いいたします。
おかの:ども、おねがいします。でも、月野先生のレポートマンガは「THE SEIJI」さんが、もうすばらしいのを描いていらっしゃいますからね~(^_^;

同人誌「メガストアSP」でTHE SEIJI先生が描かれた、月野先生マンガ


稀見:おかの先生も、月野先生とは長い付き合いと聞いていますので、おかの視点で是非よろしくお願いいたします(笑)

で、さっそくですが、これはもうインタビューの定番ですが、ペンネームの由来を教えていただけますか?
月野:はい。ペンネームの由来は…昔友人がバンドを組んでいて、それが「MOON RULER」という名前で、そこからですね。
稀見:あ、今の月野先生のサークル名ですね。
月野:最初に「MOON RULER」というバンド名を聞いた時に「-」が三つも(ムーンルーラー)入っててカッコイイな~と思ったんですよ。彼らが何故このバンド名にしたかまでは知らないですが、それがある日どういうわけか「バンド名を変える」って言いだして、別の名前にしちゃったんですよ。そこで「いらないんだったら僕にちょうだい!!」って言って、もらって勝手に使っている…という経緯ですね(^_^;

で、今度は同人誌を描く段になって、サークル名が必要になったんです。そこで、サークル名を「MOON RULER」として、ペンネームを…日本語にすると本来は「月の支配者」って意味なんですが、それだとさすがにちょっとでかすぎるので、違訳して「月野定規」としたのが始まりです。
稀見:なるほど。てっきり逆だと思ってました。「月野定規」という名前が最初にあって、それを直訳的に英語に直したのが「MOON RULER」だと…。最初に「MOON RULER」ありきだったという訳ですね。
月野:そうです。丁度自分が初めてインターネットをやり始めた頃で、最初によく出入りしていたサイトがあるギャルゲーのサイトで、そこの企画でゲームにちなんだ俳句を作ろう!みたいなのがあったんです。その場所では「お題が俳句なんで、ハンドルネームもそれに合わせて日本語で俳人のようなものがいい!」という事だったので…。と言ってももちろん強制じゃないんですが、ハンドルネームを持つ事自体初めてだったしどうしようかと思って…。その時、無理矢理日本語にしたのが「月野定規」だったんです。
稀見:では、デビューする時に何かペンネームを考えたという訳ではなく、以前から使っていたのを、ということですね。
月野:そうですね、デビューに合わせてではなくて、その前から「月野定規」というハンドルネームで、そのまま同じ名前をペンネームにしたという流れですかね。あ…でも、持ち込みする前に、同人誌を1冊作っていて…。実はこれが初めて作った同人誌なんですが、この時点ではペンネームは「MOON RULER」だった気が…。
稀見:あ~その同人誌(MICROWAVE)、ネットで見つけたんですが、もの凄い高値が付いていましたよ(^_^;
確か97年に発表したものですよね?

97’「MICRO WAVE」今持っていたら確実にプレミア


月野:そうです。この同人誌は仲間3人で描いたんですが、他の2人は4~6Pなのに、僕だけ44Pってもの凄い偏った配分で…(^_^;
稀見:この時の同人誌のジャンルはなんですか?
月野:元ネタは…先ほどちょっと言ってたギャルゲーなんですが、「リトルラバーズ」という…なんというか、「アクアゾーン」てデスクトップで熱帯魚を飼うソフトがあったじゃないですか~。
その女子高生版みたいな感じのゲーム…だから正確に言うとデスクトップアクセサリーになるのかな?パソコンの時計とリンクしていて、時間になると妹が帰ってきて「おにいちゃん、ただいま!!」「おやすみ!」みたいな事を言ってくれるソフトです。そのソフト自体は当時どうやらそんなに人気があったわけではなかったみたいなんですけど(笑)そのぶんファンの熱も高かったし、僕自身もその頃はかなり入れ込んでいたので、しばらく描いていたと思いますね。



■400部刷って、15部しか売れなかった…(; T_T)

稀見:マンガ家になる前は何をされてたんですか?
月野:そもそも最初は「抽象画」をやっていました。僕は、大学が美大のデザイン科だったんですが、2年で中退したんです。在学中に、身の程知らずにも作家志望というか、自分の作品を作りたいという欲求が強くなりすぎて…。
稀見:それは、アーティストとしてですね。
月野:そうですね、アーティスト…嫌な響きです(苦笑)。僕のいた大学では、他の学科に途中からは転科できなかったので、デザイン科が嫌なら受験からやり直すしかなくて。で、「こりゃダメだ」と思って辞めてしまったんですが、そうすると居場所がなくなってしまうじゃないですか。そこで「じゃ、仕方ないから留学でもしてみるか」と思ってN.Yに留学したんです。3年ほど行ってたんですが、そこでは現地の美術学校で抽象画のワークショップに参加してました。

3年後に帰ってきてからは、バイトしながら年に1回、銀座でギャラリーを借りて個展を開いたりしていました。でも、20代も後半になるとそろそろバイトと創作の二足のわらじがきつくなってくるんですよ。絵(抽象画)で食っていければいいんですが、そんなのは到底叶わぬ夢で…。バイトは絵とは関係ない異業種のものをいろいろやっていたんですが、とにかく絵で食っていけないというのが個人的には凄いジレンマでした。で、最後にやっていたバイトが地元のパソコンショップの店員で…。

パソコンショップというのは、わりかしオタク系の情報というのが入ってきやすい所だったんです。折りしも「エヴァ」が大ブームの頃で、「エヴァ」観て「おお~やっぱりアニメも面白いな」って思いました。それまで絵を志していた間は、マンガはチラチラ読んだりしましたが、10年くらいアニメは全く観ていなくて…。そんな中、バイト先の友達が「コミケって知ってますか?ニュースにはあまり出ないですが何十万人も来る凄いイベントなんですよ!」って言ってきたんで、「じゃあとりあえず見に行こう!」って事になって見に行ったんです。
稀見:それが97年で、もうビッグサイトですね。コミケ一般参加デビューは97年の夏コミだったと…。
月野:見に行って、とにかく驚いたのが、お金が飛び交ってて、千円札がゴミ袋に入れられてるんですよね!(笑)もちろんそういうのは一部の壁の大手さんだけなんですが、「マンガって儲かるんだぁ…」ってもう口あんぐりでした(^_^;
作家さんが同人誌を描いて、それが売れて売上が立つというのが羨ましかったですね(^_^;
稀見:作品を作って販売するという形態は、個展と一緒ですからね。
月野:美術畑の場合、個展やってもまず儲からないんで(笑)「買ってもらう」というより「見てもらう」ていう感じの場なんで…。そこに経済活動が並行してちゃんと成り立ってるのが本当にすごい事だと思いました。それで凄く興奮して、「じゃ、コミケ出ようぜ!」という感じにその場で盛り上がって、勢いで申し込んだんです。とはいえオタク業界に詳しいはずもなく、「エヴァ」観ただけでそれだけですから、右も左もわからないまま、とにかくゲームかアニメのエロ本を作っておけばいいんだろう!ぐらいのものすごい雑さ加減でした(汗)。
稀見:じゃ、マンガ自体を描いたのも、この同人誌(MICRO WAVE)が初めてだったんですか?
初めてでこのレベルは凄いですよ!
月野:いやぁ、これは酷いですよ~(^_^;この時僕26歳ですよ?!それで、この絵って…
しかも美大に居たのに!!(^_^;もう、下手もいいとこでホント恥ずかしいです(大汗)。

とても初めて描いたとは思えないレベル!


おかの:でも、それが緩急に繋がって凄く読みやすいですよ~~。
月野:おかの先生なんでも褒めるからな~(笑)
稀見:でも、私もうまいと思いますよ。まず、経験がないのに描こうと思いませんから(^_^;
月野:そもそも具象は嫌いだったんですよ。受験のデッサン以降ほとんど描いたことなかったですし。とはいえ自分で描いてみて、ショックはショックでした。卒業はしてないですが美大をかじってはいたので、マンガぐらい描けるだろう!という、美大生にありがちなちょっとたかを括っていた部分があって。で、やってみたらこれですから…もう大ショック(^_^;それはもう悔しいというか…「こんなに描けないはずはない!!」とか思って。今でもそれは悔しいんですが、その後10年やってもギャップは埋まらないですし、もはや言い訳のしようがないという(笑)
で、この同人誌で97年の冬コミに参加するんですが、生まれて初めて描いたマンガで初めて出した同人誌のクセに、コレ…マット加工までしてあるフルカラー表紙のオフセットという馬鹿げた仕様なんですよ(笑)

それを400部刷ったんです。で、意気揚々とコミケに持ち込んで…売れたのたった15部!!
稀見:え~それしか(^_^;
月野:丸1日終わりまでいて15部しか売れなかったというのが、これまたもの凄いショックでした(^_^;
なんで売れないのかの理由もわからずに「売れないね~」って話してたら、友達が…「外周(東館の壁サークル)の人達は、ほとんどプロの人だし、プロじゃないから売れないんじゃない?」ってポツリと言いやがって…(笑)
それで僕も「そうか!じゃあ、プロになろう!!」って…アホの子ですよホント(笑)
稀見:ある意味わかりやすい動機ですが、そう発想転換できるのは凄い!
月野:で、コミケが終わってからいろいろ考えて、まずプロになるにはオリジナルじゃないとダメだ!と思って描いたのがこれです。

この頃は、ペンじゃなくて、Macの「Painter」 で描いてました。

冬コミでショックを受けたので、それ以降いろんなエロマンガ雑誌を買って勉強するようになったんです。傾向と対策みたいな…。その当時は「快楽天」が色がはっきり出てて、純文系で青臭くてせつなっぽくて、しかもHがあるという雑誌だったので、表紙が村田蓮爾先生でオシャレでしたし、狙うんだったらここかな?って思って。なので最初の投稿作品はそれを意識して描いた記憶が…。
稀見:じゃ、この作品は全くどこにも発表はされてない作品なんですね?
てっきり、「快楽天」に最初に載った作品が投稿作品かと思ってました。
月野:そうですね、受賞作品のワンカットとして載った部分はありますが、これはいまだに未発表の作品です。
稀見:じゃ、この作品(未発表投稿作品)が2作目のマンガ作品ということですね。これまた、凄いレベルですね。
月野:笑撃の1作目(笑)から8ヵ月後くらいの作品で、これが2作目です。オリジナルとしてはこれが処女作ですね。

「快楽天」に持ち込んだ、未発表作品!


カットだけが「予告」(快楽天)ページで使われた


■プロデビューなんかできっこない

稀見:マンガ自体の基本的な描き方は知ってたんですか?
月野:道具くらいですね、知ってたのは。中高生の頃に「マンガの描き方」みたいな本を見たりして、その程度において知っていたというだけで、それはもう完全に子供レベルですから…。実際つけペンにインクつけてみても、裏返しで使ってるからぜんぜん線なんか引けないし、原稿用紙もツルツルしちゃって…てんで話にならなかったですね。ところがもう当時はすでに「タブレット」という文明の利器が発明されてて…。これでギジャギジャって描いて外側を消しゴムで消せば線になるじゃないかって(笑)実はそれで、最初の同人誌も投稿作品も描いたんです。
おかの:そうだったの!??(;゚∀゚)=3
月野:だから、めちゃめちゃ時間がかかりましたよ~。
稀見:じゃ、実は最初からフルデジタルマンガだったという!!
月野:最初だけはフルデジタルでした。でも、デビューしてからはアナログになって、ペンの練習が始まるんです(笑)多分つけペンじゃないとマンガが描けないという状況だったら挑戦してなかったです。これ(デジタル)だったから、なんとか始められたという感じですね。
稀見:で、この作品を投稿したと…。
月野:当時聞いた話で、マンガを描いて持ち込みをすると、プロの編集さんにボロクソにけなされるっていう…。これは今も普通の人でも耳にした事があるであろうよく言われてる話ですが、まぁせっかく描いたんだし当たって砕けてみようと!
稀見:じゃ、投稿じゃなく持ち込みだったんですね?
月野:持ち込みです。投稿には最初から興味がなかったです。タイムラグがあるのが嫌だったし、なにより面と向かってプロの編集さんの生の声を聞いてみたかったので…。そこで「どの雑誌に持ち込もうかな~」って、本屋で雑誌を漁ってみたんです。まず基本「快楽天」というのは決めていたんですが、原稿といっても紙原稿ではないので募集要綱に合わないわけですよ。それで「どうしたものか」と思っていたら、これ(萬福星)が創刊されてたんです。

「萬福星」ビブロスから創刊されたオールデジタル?美少女マンガ雑誌


稀見:ああ~それで、萬福星だったんですか(^_^;
確かに、この雑誌の売り文句は「フルデジタルコミック」でしたしね。公称ですが…(笑)
月野:だったら、この雑誌でもOKじゃん!と思って…。
そもそも、「プロになる」とか口ではほざいてみても、内心は「プロデビューなんかできっこない」とも思っていたので、だったらなるべく多くの編集部を回って、ボロクソに言われるだけ言われたら諦めようと…。創作なんか諦めて就職しようと思ってたんです。
稀見:引導を渡してくれ!みたいな気持ちだったんですかね。
月野:その通りです。最初に持ち込みをしたのは「萬福星」(ビブロス)でした。ドキドキしながら電話をして、アポを取って行ったにもかかわらず、担当さんがいなかったんですよ(笑)代わりにその場にいた別の編集さんが「じゃあ私が見ます」という感じで、とりあえずプリントアウトしたものを見せたんです。そしたら「想像していたよりはずっとまともでした」とか言われて(笑)

それで「今は編集長がいないのでコピーさせてもらって待ってもらっていいですか?」ということだったので、「構いませんが、僕としては、デビューを目指して持ち込んだ訳ではなく、初めて描いたマンガでなるべく多くの編集さんに見てもらいたいので、他の編集部にも見せに行ってもいいですか?」と聞いたら「それはOK」との事だったので、その3日後ぐらいに今度は快楽天の編集部に持ち込んだんです。快楽天では電話でアポをとった編集さんがちゃんと居てくれて…(笑)原稿をペラペラと軽く見た後「ちょっと待ってて~」って言われて待ってたら、突然別の編集の方が出てこられて…。渡された名刺見たら、1肩書きに編集長って書いてあるんですよ。「あれ?おかしいな…編集長なんて普通そう簡単に会えないはずじゃ…?」とか思ってたら「キミ、これ1作目なの?」って聞かれて…「まぁ、そうです」「歳いくつ?」「27です」って言ったら、「持ってくるの10年遅いな~~!」って…(笑)

その後いきなり「うちはページ●●円からなんだけど…」って具体的な原稿料の話が始まっちゃって、「コレにはそれなりにいい賞もあげるし、デビュー作を再来月号に載っけるから!」ってその場で言われて…。掲載が真冬である事を考えると、持ち込んだ作品が真夏の話だったのであまりにも季節感がないという事で、「新しいの描きなさい」と…。そんなやりとりがあって、その日帰るときにはあっさりデビューが決まっちゃってたんですよ(汗笑)当時「快楽天」はアナログ主体だったので、「ペンは使ったことある?」「いや、ないです」「まぁピグマでもできるから~」とか言われて(笑)。アナログで原稿上げた事なんかないですし、トーンも「パワートーン」しか使った事ない人間が、ピグマだったら描けるというものではないんですけど(笑)せっかくチャンスをいただいたので頑張ろうと…(^_^;
稀見:では、持ち込んだのはビブロスのが早かったけど、ビブロスは保留で、ワニマガジンの方は即デビューとなった訳ですね。実際デビューは「快楽天」の方が若干早いですからね。
月野:ビブロスの方は家に帰って2,3日したら電話がかかってきて、こちらも「お仕事をして頂こうと思います」とおっしゃって頂いて、ほぼ同時に2つの雑誌でデビューする事になったんです。


■デビューして初めてネームのお勉強が始まった!!

稀見:でも「萬福星」のほうでは、超弩級新人登場!!というお墨付きの予告が入ってますが、あ、おかの先生もですが(^_^;
これは、どういう経緯だったんでしょう?

「超弩級」のあおりがまぶしい!


月野:ハッタリかまし過ぎです(笑)「超弩級新人」はおかの先生の方にかかってるんじゃないですか?(笑)
おかの:いやいや、そんなことはないですよ~(^_^;
稀見:ずっと勘違いしてました。「萬福星」で描き始めたので、最初はアナログだったのをデジタル化したのかと思ったら、実はもともとデジタルで、「快楽天」のためにアナログ化したんですね!
月野:そうです。なので「快楽天」でのデビュー作は、生まれて初めてカブラペンを使って描きました(^_^; なにぶん全くの素人ですので、この時はペンの「入り」も「ヌキ」も知らなくて、集中線なんて筆ペンとかで描いてて(汗)

…もうめちゃくちゃでしたね~。酷すぎて逆に微笑ましいです(笑)

このデビュー作は本当に苦労しました。持ち込みした作品は、そんな訳で意外にも褒められたんですが、2作目はコンテ切り出したら全然ダメで、「あれぇ?なんか、前作のなめらかな読みやすさが全くないな~マグレだったの?」って言われて(^_^;そこから初めてネームのお勉強が始まったという感じでした。作品が載った時はもちろん嬉しくもありましたが、同時に死にたくもなりましたね。誌面で他の作品と並列して読んだ事で、初めて自作を客観視出来たんだと思いますが…彼我の差を思い知りました。「うわ~ヤバイな~」って思って…もの凄く恥ずかしくて消え入りたかったです。
稀見:確かに、そうそうたるメンバーですからね~。
月野:今思うと、本当によく拾い上げてもらえたな~と…(^_^;
稀見:「萬福星」の方は、別の意味で個性的な作家さんが多かったですが、こちらはデジタルなので、マンガの印象が違いますね。
月野:こっちは鉛筆画をスキャンして、コントラスト調整して描いてました。「快楽天」の方は出せば出すほど凄い注文が付いて「ダメだダメだ!」という具体的な指示が多かったのに対して、「萬福星」の方はそういう「ダメ出し」が全くなくて、何でもOKになっていたので逆に不安になったりしていました(^_^;
稀見:プロになろう!という選択肢の中で、月野先生の中では「エロ」しかなかったんですか?
月野:いや、最初はエロマンガ描くことにやはり人並みには抵抗がありました。ですが、当時はもうエロの側から一般の方にシフトしていく作家さんもいらっしゃいましたから…。とにかく「向こう(一般)とも地続きになっていて、全く違う世界ではない」という意識があったので、「だったら入り口はこっち(エロ)でもいいじゃん」という感じですね。「それでゆくゆくは一般の方へいければなぁ」というイメージを一応は持っていました。今は、うーん…どうかな…て感じですが(笑)
稀見:この頃は「萬福星」が隔月発売でしたから、それでも毎月描いてる計算になりますね。
月野:この頃が一番描いていたんじゃないですかね~(^_^;
もうとにかくがむしゃらでしたね。なにしろ描いたらお金がもらえるんです!作品作ってるだけなのに、ちゃんと原稿料もらえるというのが…「もう2足のわらじは卒業だ!!」と(^_^;
稀見:ちなみに、この時はもうバイトは辞めていたんですか?
月野:そうですね、作品を持ち込むあたりには辞めてましたね。上手くいく当ては何もなかったはずですが…一体何考えてたんでしょうね…僕(汗)



■リン・ミンメイは初恋の人です(笑)

稀見:では、小さい頃のお話などを聞きたいと思うんですが、今までの話を聞くと、いわゆる王道的なオタク街道を歩んできた訳ではない気はするんですが?
月野:いや、空白の10年間があるだけで、小学校6年から高校1年ぐらいまではオタクはオタクだったと思います。やっぱりアニメとか大好きで…。でも、確かにそんなに深いオタクではなかった気がしますね。クリィミーマミとか観てて、確か着せ替えシートとか付いているファンブックとかを買って、それを弟に見つかって「なんだよ兄貴~そんなにクリィミーマミが好きなのかよ~!」って呆れられたの覚えてます(笑)
稀見:マクロスも好きで、マクロスでは「ミンメイ派」だったと!(笑)
月野:そうですね。リン・ミンメイは初恋の人です(笑)ですので僕は断然「ミンメイ派」です。この頃は、ちまたの女の子には目もくれず「ミンメイちゃん!ミンメイちゃん!」って言ってましたね(^_^;
稀見:オタク活動は主に受ける側で、何かを発信する方ではなかった?
月野:そうですね、観る側で十分で…サークル活動みたいなのもなく、ただとにかく観て、数少ない話のわかるクラスメイトと「先週どうだった?」みたいな話をする程度でしたね。そこで盛り上がってどうこうという事もなく、ただひたすらにお小遣いを溜めて、やっとマクロスの「MISS D.J.」のLPが買えたぞ!っていうだけな(^_^;

その頃レンタルビデオ店も出始めて、初めて借りたビデオが「メガゾーン23」でした。なんか「キスシーンが糸引く!」っていうのに踊らされて…(笑)
稀見:美樹本晴彦ですね。

「マクロス Vol.III MISS DJ」


「メガゾーン23」(OVA)


月野:そうですね、美樹本キャラ好きでしたね~。

あとは、土曜の5時半からの「エルガイム」「ザブングル」とか、5時55分からの「ダグラム」「ボトムズ」ですね。永野護さんとかも好きでしたね~。一番熱が高かったのは「エルガイム」の時ですかね。
その後に「Zガンダム」が始まったんですが、それが終わる頃に熱が冷めて、「ZZ」は最初の方は観ましたが、中盤以降は観てなかったです。その辺で卒業したのかな…?。

重戦機エルガイム


稀見:学生時代は、部活は何かされていましたか?
月野:中学1年の時は「ギター部」(笑)
新人勧誘の時にライブとかやってて、かっこよくて、これはモテそうだ!って思って(笑)
でも、練習が…他の事して遊んでばかりだったんで、ほとんどうまくならないんです。結局、開放弦しか弾けるようにならなくて(^^;)

そこで、中2になって友達に誘われて水泳部に転部したんですが…。人は水の中では息ができないんですよね(笑)練習はきついし水中は息できないしで、なんやかんや理由をつけてはプールサイドでバスタオルにくるまっているという…。それで高2になった時に空手部というのが新設されまして、新設の部だから口うるさい先輩とかはいないんで「ここは強くなれそうだしいいかな!」と水泳部の同級生達と数人で空手部に転部しました。そしたら今度は理由もなく後輩に殴られたり蹴られたりの毎日で…(笑)。

まあ散々で、どれも全く身についておりません!


■成せば成る!

稀見:文化系の、絵に関する部活とかには興味はなかった?
月野:マン研はなかったですね~。アニメ研はあったのかな?美術部もあったけど興味はありませんでした。
稀見:じゃ、美術をやろうと思ったのは高校の時?
月野:そうです、高校2年の時ですね…。大学受験がきっかけです。それまでも絵に興味がなかったわけではないですが、クラスに1人2人ぐらいは必ずいる程度のレベルで、特別上手いというレベルではなかったです。同じ学年でももっとうまい子はいましたし…。中途半端で才能はありませんでしたね。

で、高校で進路を決めないとという段階になって、その時に同じクラスにもの凄く絵の上手い友達がいて、彼から「美大目指すから一緒に目指そう!」と誘われまして…。とはいえ、「美大」って「音大」みたいに、幼少の頃から英才教育を受けてないと入れないものとばかり思っていたので、その辺りを美術の先生に聞いたらどうもそうではないらしく「高2から始めるのが早いって事はないが、遅いという事もない、全ては本人の頑張り次第だ」みたいな話だったんで、「じゃいっちょやってみるか!!」という事で、先の友達と2人で美転(志望校を一般から美大系に変更すること)してみた次第です。
稀見:美術系の予備校みたいな所に通ったんですか?
月野:いや、それはうちの学校の美術の先生がやっているアトリエというか、画塾みたいのがあって、そこに学校帰りにいつも通ってました。
稀見:聞いていて凄いな~と思ったのが、自分に向いているか向いていないかという判断ではなく、とにかくやってやろう!という判断で始めて、それをものにしてしまうところですね。
月野:ものにできたかどうかは…果たしてわかりませんが(苦笑)自分に向いているか向いていないかという物差しはなかったですね~。「成せば成る!」とばかり思っていました。思い込みの激しい浅はかな子供だったとしか思えませんよ(^_^;
稀見:でも、モチベーションって何か目標がないと持たないじゃないですか?
だけど、やってやろうという気持ちだけで、結局最後まで押し通してしまう、マンガの時もそうですが、それってやっぱり最初から持っているポテンシャルとだと思うんですよね。もちろん、それを実行できる努力があってですが…。
月野:んー…まぁ嫌いなことをするわけではないですし、「ポテンシャル」とか言われると…それもどうかと(汗)何かあるとすれば…努力…する事?…だけですかね。それ以外は全くないです(^_^;
稀見:いやいやいや!(;゚∀゚)=3
おかの:いやいやいや!(;゚∀゚)=3
月野:結局、偏差値教育の負の賜物だと思うのですが、受験戦争みたいな事を結構刷り込まれていたんで、「競争」が好きなんですよね。競争に負けたら悔しいし、勝ったら嬉しい…という、非常にイヤなガキだったと(^_^;
で、結局競争自体に勝つことが目的になっちゃってるから、大学に入る為に努力して、それが受かって報われたのは嬉しいんですが、そこでそれ以上っていうのがないんですよ~。
稀見:燃え尽きちゃうんですよね。
月野:完全に人生の目的を勘違いしていたというか、それでは本末転倒ですから。その後そういうことに気づいて気づいて、反省しまくる20代という感じだったですね(^_^;




■月野作品の作風に脈々と刻まれている、原点の作品

稀見:話は少し戻りますが、マンガの方では高橋留美子先生の影響をかなり受けていらっしゃると…。
月野:そうですね~。「うる星やつら DVDBOX 全50巻」が僕の宝物です!(笑)
稀見:原作よりアニメですか?
月野:「うる星やつら」は原作よりアニメですね。でも、それ以上に雷に打たれたような衝撃を受けたのが「めぞん一刻」ですね!こちらは原作至上主義です。連載されてたのが「ビックコミック・スピリッツ」だったので、なんとなく表現も大人っぽいじゃないですか?
だから、中学生の僕からみたら大学生って、少し手を伸ばしたら届くような位置にあるラブロマンスって感じで!

最初知らなかったんですよ、3巻ぐらい出るまで。なので、見つけて読んだ時にはとにかく衝撃を受けましたね、ラムちゃんより僕にとっては管理人さんの方が断然魅力的だったので…(^_^;

「めぞん一刻」(高橋留美子)


おかの:「めぞん一刻」は月野作品の作風に脈々と刻まれている気はしますね。年上の女性に憧れる…というか…。
月野:あああ~確かに、僕の年上好きは響子さんからきているのかもしれませんね。


■マンガでこんなHな物が!

稀見:思春期の頃に通ったエロメディアなどはありますか?
月野:僕らの頃は、実写系だと「GORO」とか「BOMB!」とかですかね?クラスメイトに見せてもらったり…。

「GORO」(小学館)


「BOMB!」学研ホールディングス


それが最初でしたね。マンガでは、本屋の片隅で少年ビックコミックとかを立ち読みしていたときに、隣になんかちっちゃくて薄い本が置いてあったんです。それが「漫画ブリッコ」だったんです。

「漫画ブリッコ」(セルフ出版)


稀見:大きさ的には「BOMB!」と同じサイズでしたよね。
月野:当時はゾーニングとかも全然されてませんでしたし…。もちろん、裸っぽい表紙の本は別の所にひとまとめだったんですが、これは並びで置いてあったので、ちょっと手にとってパラパラっと見てみたんですが、もうビックリでしたね!

正直買おうかやめようかもの凄く迷いました(^_^;ま~「エロトピア」とかだったら表紙からして明らかなんですけど、「ブリッコ」は表紙とかもわりと普通じゃないですか。だからそういうのよりは買いやすいんですけど、家の近所の本屋だから、そこのおばちゃんも知り合いなんですよ(笑)
なので「これを買ってもしバレたら…」とかいろいろ逡巡しました(^_^;
結局性欲に負けて買いましたが!
稀見:おお~買えましたか!
月野:ええ!それから、毎月勇気を振り絞るようになりました(笑)

エロというカテゴリーの中では、自分の感覚にフィットするという意味では、「BOMB!」とかではなく「漫画ブリッコ」の方が、なんて言うか…「キ」ましたね。マンガであるぶん、コマを追いながら脳内でイメージを繋いでいけば動画ができ上がるんですよね。そうやって、脳内補完してできあがる動画に優るものは無かったですね。
「マンガでこんなHな物が!」というのが、とにかく衝撃的でした。

まさか将来自分がこういうものを描く側になろうとは、全く想像もしていませんでしたから…。
本当に感慨深いですね~。



■続きは同人誌で!!(宣伝)

月野定規先生のインタビューフルバージョンは、「エロマンガノゲンバ Vol.2」に収録されています。後半は、主に先生の作品を個々に掘り下げていく内容になります。あの作品に先生が込めた気持ち、発想の源、意外な出来事など、さらに濃い内容満載です。

「エロマンガノゲンバ Vol.2」


月野定規先生インタビュー表紙


冬コミ、委託等で販売いたしますので、さらに深い「月野」ワールドを垣間見たい方は是非お買い求めを!( ^_^)/

エロマンガノゲンバ Vol.1
2009年8月発行 140P 1,000円 (画像をクリックすると詳細が見れるよ!)
インタビュー特集!
  • ゴージャス宝田
  • RaTe
  • みたくるみ
  • URAN
その他の現場!
  • マンガ制作の現場(みたくるみ、URAN)
  • 表現の現場(規制問題)
  • 販売の現場(漫画王倶楽部)
現在絶版中です。今のところ再版の予定はありません。

エロマンガノゲンバ Vol.2
2009年12月発行 140P 1,000円 (画像をクリックすると詳細が見れるよ!)
インタビュー特集!
  • 月野定規
  • 紺野あずれ
  • 柚木N’
その他の現場!
  • 図書館の現場(国会図書館、米沢嘉博記念図書館)
  • イベントの現場(三峯徹、貧困問題)
  • 座談会(米倉けんご大好き女子座談会)
「COMIC ZIN」さん「とらのあな」さんで委託販売中です。
COMIC ZIN とらのあな
※ 在庫がない場合もあります。書店委託は、定価より若干高めになります。


■もちろんゲストも!

特別コメンテーターとして参加された「おかのはじめ」先生のレポートマンガに、大物作家追っかけ人の「URAN」先生のレポートマンガも同時に収録しています。
同じ作家としての別の視点から、月野先生を知るチャンス!

おかの先生による、月野先生レポートマンガ!


URAN先生による、月野先生マンガも!







■著書紹介(新品)

著者:月野定規
発行日:2009年3月
1,050円(税込)


著者:月野定規
発行日:2007年8月
1,050円(税込)


著者:月野定規
発行日:2005年12月
1,050円(税込)


著者:月野定規
発行日:2004年12月
1,050円(税込)


著者:月野定規
発行日:2002年4月
1,050円(税込)




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176 ero

Vol.2も熱い(厚い)よ!!
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あけましておめでとうございます!